【扉の言葉】
雑誌や冊子のオープニング
扉の言葉を書きます
扉の言葉はその世界へ入ってゆく
魔法の呪文のように
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『街に恋する』
どこからか、
ふわふわと、揺れる草木の匂い。
ぱらぱらと、本をめくる風。
ころころと、こぼれる笑み。
ぱたぱたと、無邪気な足音。
そこは、空に腰かけた街。
誘われるように、
風と出会い、
音に触れ、
色と遊ぶことに、
時を忘れた。
「もう少し、あなたといたい」
太陽を見送った夕暮れに、
ゆらゆらと、灯りを囲む。
出会いの一日が暮れて深まる。
「また、あなたに会いたい」
そっと指きりを交わす。
それは、
街に恋した、青空のお話。
(立川ルミネ 「あおぞらガーデン 」リードテキスト より)
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『水のつむぐ輪』
湧き水のほとりで育った野菜は、
どこか育てた人に似ている。
ほほ笑む人参や玉ねぎを、かごいっぱいに詰めこんで、
お堂の脇の坂道を、一歩一歩のぼる。
隣りまちの横顔が美しく見える坂の上で、
きれた息を整えながら、来た道を振り返り、
もう小さな過去となった景色を眺める。
ふと、
「あなたは、なにをしているかな」
このまちで暮らし働く、
こころ隣りあう人びとの横顔が浮かぶ。
降った雨が、土の奥へと染みてゆく。
目には映らないその流れは、静かに巡り、
ふいに湧き出る水になる。
それは、誰かの心のぬくもりに気づくとき。
心のせせらぎを感じながら、
約束しなくても会える場所に、
明日は、あなたのほほ笑みを迎えに行こう。
そうやって、
このまちの時はめぐり、
このまちの心はつながる。
このまちと生きている。
(けやき出版 雑誌「たまらび」国分寺市特集より)